――ねぇ、フラン

――今日の星座占い一位って何座か知ってる?

――凄いよ、蛙座なん…
「そんな星座ねーよ」
夢見が最悪だった。






愛しているよとどれだけ云えたら





『今日のあなたは絶好調!仕事もサクサク進みそうよ。ラブ運は五つ星ね!個性的なファッションで目立っちゃえ☆素敵な人からプレゼントが貰えるかも!?』
何が絶好調だ。
朝っぱらからスクアーロ先輩の怒鳴り声が耳に響くし、ベル先輩にナイフを5本くらい刺された(あー涙出てきた)。変態雷オヤジが何故か勝ち誇ったような顔でミーの前を通り過ぎて行ったし(なんだアイツ)、ルッス先輩はふるーちー(「んもぅ!フルーティーよ!」という声が聞こえた気がした)な香りをまき散らしながらミーの制服を勝手にアレンジしようとしていた(止めてくださいー)。
ボスが不機嫌で皿が飛ぶわ椅子が飛ぶわスクアーロ先輩が飛ぶわ…そしてきわめつけはコレ。
先輩がいませんー…」
今日は非番で一日付き合うって言ってたのに。何でですかー。
もしかしてまだ寝てるん…
「あ、なら任務に行ったわよ」
上機嫌なルッス先輩がフリルの付いたエプロン姿で現われた。
「…どこにですかー」
「んー、ナポリだったかしらぁ?」
なんてこった。
先輩は任務に行ってしまった。それもミーをおいて。
「それからね、ボスが、ミラノに飛べって」
プレゼントってあれか。ボスからの任務か。
(ミーが何をしたっていうんですかー)
明らかに意図的な人選に溜息が出た。
「今日は大事な日ー…なのに、」
今日こそ、今日こそ先輩が好きだって言おうと思ってたんですよー。
ぽつりと呟いた言葉は、蛙から聞こえた声に書き消された。
『フラン?聞こえる?』
「あ、先輩ー…」
キレーなソプラノボイスが響いた。
べしべし叩いた蛙帽子の顔が心なしか嬉しそうに見える。
『今日はごめんね。急に任務入っちゃって…。それで…あの…ボスに応援頼んでくれる?』
ちょっと量が多くて。
聞こえる声は申し訳なさそうに沈んでいる。
ぴかん。妙案が浮かんだ。
「ミーが行きますー」
『え?今日フランも任務があるって…』
「終わりましたー」
『そんな早過…』
「今どこですかー?」
無理矢理言わせた場所は案外近かった。
「じゃ、今から行きますんでー」
通信を切って、蛙帽子をかぶり直して、
「れっつごー」
今日はわりと好調かもしれない。



「…何で買い物なんですかー」
積み上がった荷から落ちそうなりんごをひとつ、取って齧り付いた。
酸っぱ…
「分かんない…でもボスがりんごを食べたいって…」
先輩の任務はただの買い物だった。それも近くの市場で。
あのボス、邪魔してるとしか思えませんねー。
なんだか無性にムカついて足下の空き缶を蹴ってやった。カコン、蹴りあげられた缶は蛙帽子に当たった。
なんだよー。
「あ、フラン、ジュース付いてるよ」
先輩が取り出したハンカチで蛙の青い目を拭く。
予想外に近くなった距離にドキリとした。
視線に気付いてピンク色の唇が笑みに歪む。
あれ、なんだかいい雰囲気じゃないですかー。
今日は絶好調かもしれませんねー。占いバンザイ。
このまま勢いに任せて言ってしまおうか。
先輩、愛してま…」
『カスがなにしてやがる』
突然蛙から響いた地獄の声。
しまった。ボスを忘れてた。
『はやく任務に行け。このドカスが』
「…了解ですー」
…撤回。やっぱり今日は絶不調だった。










おまけ
「ね、フラン」
「なんですかー?先輩」
「今度デートしよっか」
「…喜んでー」
目玉飛び出るかと思った(それくらいびっくりしたんですー)。