「なんていうかフィーリング?そんなのが合った気がしたんですよね。…え?ああ、これは偶然です。運命なんかじゃありません。僕が先輩以外の何かにとらわれることなんかないんで。――赤くならないでくださいよ。こっちまで照れるじゃないですか。…え?嘘?まさか。僕はいつだって本気ですよ。だからほら、先輩は僕の胸にだけ飛び込んでください」
そう言って彼は私をギュッと抱き締める。熱い。
「部長とか宮地先輩とか、三バカとか、僕の先輩に近付き過ぎなんです。誰に断って僕の先輩に話しかけてるんですか。だいたい先輩も先輩ですよ。先輩は僕のなんだから、他の男に話しかけられても無視すればいいんです。…夜久先輩?ああ、先輩、ヤキモチですか。…違う?嘘つかなくていいですよ。僕は先輩のことだったらなんだって分かりますから。――あははっ先輩、むくれないでください。可愛くて思わず食べたくなる。…冗談ですよ。そんなに警戒しなくても大丈夫ですってば」
その時ガタン、音がして、道場の扉が開いた。
「お願いしま……何してるの?」
「月子、ちゃん」
月子ちゃんの大きな目が真ん丸になっていく。
多分、いや絶対に月子ちゃんは驚いてる。
「あのね、」
「…む………何をしている、木ノ瀬」
…宮地君登場。
眉間の皺がこれでもかというくらい深い。
「あの、だから…」
「――二人とも入口で何してるの?」
誉先輩がひょいと顔をのぞかせた。
先輩はこっちに気付いて、
「おはよう、さん。…と…木ノ瀬君?…これはどういう状況かな?」
先輩の目が私に問い掛ける。
思わず目をそらした。
「見ての通りです」
梓が掴んでいる手の力を強めて、
「先輩は僕のものです。ね?」
どう答えればいいか迷っていると、私に笑いかける梓の顔が近付く。そっと耳打ち。
「…頷かないと今ここでキスしますよ?」
自分でも顔が真っ赤になるのが分かって、慌てて首を縦に振った。
「なんだ、残念」
楽しげに歪んだ梓の顔。そのまま彼は月子ちゃん達に宣言した。
「僕と先輩、付き合ってるんで」
手、出さないでくださいね?
少年は不敵に笑う
あとがき
私の中の梓ってこんなイメージです。ヒロインには甘いけど宮地君とかには厳しい(笑)。
コイツら神聖な道場で何してるんだ。